「ハンセン病の子ども」が受けた心といのちの被害は、遠い過去の日の差別の一事例であるだけでなく、いじめが多発する現在の学校の人権状況を改善する有効な教育素材として活用されるべきです。教育素材としての「ハンセン病」は、子どもたちにいのちと人権の尊さを切実に伝え、子どもたちの心を育て、これからの行動や生き方を考えさせるうえで極めて有効であることを、私は自分の拙い教育実践からも確信しています。歴史の影に隠れてしまいがちな「ハンセン病と教育」に目を向け、かつての「子ども」と「教師」それぞれの”負の体験”をこれからの教育と子どもたちのために生かしてほしいと心から願っています。(まえがきより)
推薦の辞
一陽来復の春、皆様にはいよいよご健勝のこととお慶び申し上げます。 さて、IDEAジャパン理事の佐久間建さんが、このたび『ハンセン病と教育』(人間と歴史社)を出版されました。佐久間さんは、東村山市で教員として奉職されていた頃から、ハンセン病問題に熱心に取り組み、全生園の入所者や退所者を講師として授業に招いて、子どもたちにイジメや差別など人権問題について考える機会を与えてくださいました。
佐久間さんは上越教育大学大学院に留学中、全国13の療養所を訪問し、資料を徹底的に調査・研究すると同時に、回復者からの聞き取り調査にも尽力されました。本書は、ハンセン病の歴史の中で、教師がハンセン病を病む子どもたちに何をし、何をしてこなかったか(加害責任)を検証し、過酷な人生を生き抜いた回復者の姿から「生きる意味」「命の大切さ」を訴えています。これまで例を見ない分野の著作であると言えます。
教育問題がいろいろ論じられている昨今、教育関係者だけでなく、広く一般市民にもぜひ読んでいただきたく、IDEAジャパンとして出版に協力し、推薦する次第です。