ニュースレター No.10 (2011年02月20日発行) (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7)
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2010国際ハンセン病フォーラムに参加して
九重 能利子 (会員)

昨年11月末ソウルで開催された国際ハンセン病フォーラムには、IDEA ジャパンから6名の参加があった。そのひとりとして訪韓させていただき、20カ国近い人々と国籍を越えて兄弟的にであえた事は、素晴らしいできごとであった。

ハンセン病の歴史を@不治の時代A治療の時代B社会福祉の時代C国際化時代の4つに分ける人がいたが、これに従うなら、まさにこのフォーラムこそ、そのC国際化時代における快復者の全人的国際交流・相互支援・相互力量化(empowerment)のひとつと言えよう。

ハンセン病快復者たちが、それぞれの国の状況の中でそれぞれに辿ってきた歩みは、壮絶である。置かれた社会の限界の中で、病気・後遺症としての障害と差別を越えて、社会への積極的な関わり・ミッションをそれぞれに生きてきている姿、そのメッセージの証するものは、あまりに大きく、あまりに重いものである。

「ハンセン病を体験した人こそが、ほんとうに必要な人権を知っている」「何が人には必要か、人とは何かを知っている」「魂を受け取れる場所を知っている」「そうしたすばらしい遺産を残すことができる」「人類の歴史において、ハンセン病の人々の記録は、この意味で重要である」「私たちは一人で夢をみているよりも、たくさんの人たちと共にひとつの夢を持っている」

このフォーラムにおけるであい・分かち合い、その人権宣言はほんとうに美しいものであった。それだけに、それまで快復者が歩んできた、あるいは今もなおその渦中にある病気、後遺症としての障害、その重さ・過酷さ、そして病人・家族への差別・無知の大きさ、孤独と孤立、不安・絶望、その現実の重さは測りしれないものであることが映しだされている。国際的連帯のネットワーク構築の素晴らしさの陰にある、社会の闇の深さも忘れるわけにはいかない。

今回のフォーラムには、日本からの社会学者の参加もあり、菊池恵楓園に送付された差別文書の分析から、差別の論理の解明が試みられた。日本の社会の中の根深い差別的挑戦の様相を見せつけられるものであった。病的な差別者の心理さえかいま見せるこうした差別的文書・できごとの中で、私たちは、闇を明るみに出すことで、光に照らされ、闇と闘っていく必要があるように思われる。闇の世界がより深い闇にひきずりこんでいこうとするこの暴力的情念に対し、私たちは、快復者が孤立することのないよう見守り、連帯し、共に歩んでいくものでありたい。

そしてまた、快復者とのであいをとおして、“人とは何者か”を学ばせていただく者であり続けたいと思う。

▲左端が九重能利子さん、右端がシギュー・サンドモさん(IDEAノルウェー)
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