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「第二の故郷」からの強制移転に反対する ハンセン病療養所の将来構想について 理事長 森元 美代治 わが国の植民地政策の下、1930年に設立された台湾楽生院が、いま危急存亡の秋(とき)を迎えています。地下鉄建設のため、楽生院を取り壊し、入所者約300人が立ち退き命令を受けました。すでに半数以上は、新しく建てられた病院の高層ビルに移動しておりますが、残りの約80人は、新病棟の狭い空間に閉じ込められることは、日本の植民地時代に次ぐ、「第二の強制収容だ」といって、約70年間暮らしてきた、緑に囲まれた自分たちの部屋、庭、公共施設から立ち去りがたく、移転に反対しています。 移転のタイムリミットが、去る4月16日と定められ、これに動揺した楽生院の自救会(入所者自治会)より、IDEAジャパンに対して、移転反対闘争の支援に駆け付けてほしいとの要請がありました。 私はこの楽生院問題は対岸の火事として見過ごせない問題であると考え、4月8日から11日まで、楽生院を訪問してきました。日本から、弁護団、真宗大谷派の僧侶やカトリックの神父などの宗教者、一般の支援者たちが、入れ代わり立ち代わり、楽生院へ行き、応援しています。現地では、入所者たちの人権を守ろうとする若い医師、学生、青年たちが寝ずの見張り番をして、入所者を強制的に移転させようとする地元・台北県の動きに抵抗していました。また4月15日には、台北市の中心にある中正広場で、全国からの学生や青年たちが集合して、強制移転反対のデモが数千人規模で行われました。
さて、わが国のハンセン病療養所の将来がどうなるかは、入・退所者にとって、最大の関心事となっています。第3回のハンセン病市民学会が、去る5月12、13日と群馬県草津町で開催されましたが、今回のメインテーマは「日本のハンセン病療養所の将来構想について」でした。毎年、200人もの入所者が亡くなっていく現状からすると、10年後には入所者が約1000人を切ると予測されますので、全国13の療養所がこのまま国立の医療機関として残れるかどうか、深刻な問題となっています。今日でさえ、若くて優秀な医師が来なくなって、医療面が衰退しているので、厚労省が「最後の一人になっても、国が面倒をみる」と言った約束が、果たして守られるかどうか疑問です。 さらに、国賠裁判での勝訴判決や、黒川温泉宿泊拒否事件以後も啓発活動をしているにもかかわらず、残念ながら世間の偏見・差別意識はいまだに残っています。したがって高齢の入所者は、療養所で一生を過ごさざるを得ませんし、また退所者にとっても、高齢化とともに最終的には療養所の医療に頼らなければならないので、療養所の統廃合に反対し、第二の故郷である療養所から移転させられることを恐れています。 したがって、早急にハンセン病回復者の人権の尊重と、ハンセン病療養所の存続に向けて、ハンセン病基本法という新しい法律の制定を目指して、大きな運動を展開しなければならないと考えています。IDEAジャパンの会員、および協力者の皆様にも、この問題に関心を持っていただき、ご支援をお願いいたします。ご意見等ぜひお聞かせください。
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