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日々の活動の中で −2− 理事長 森元 美代治 <ハンセン病問題基本法の制定> 全国13 カ所の国立ハンセン病療養所と、2カ所の私立療養所に暮らす在園者は2700 人を切り、平均年齢は80 歳。わが国では新規患者の発生は0となり、患者減による医師不足はどこの園でも深刻な問題です。看護・介護要員も減らされる一方で、在園者の最大の不安は、自分たちの最期を誰がどのように看取ってくれるか、ということです。家族とは断絶したままです。国は敗訴した結果、「最期の一人まで、現在の療養所で面倒をみる」という在園保障を確約しておきながら、統廃合を目論んでいます。 それを拒絶するためには、療養所の入所者をハンセン病病歴者だけに限定している現在の法制度を改め、新しく療養所の生き残り策を樹立しなければなりませんでした。そこで「ハンセン病問題の解決の促進に関する法律(ハンセン病問題基本法)」の制定が不可欠だったのです。現在の療養所で、ハンセン病以外の他の疾病治療や老人医療等も可能にし、広く国民健康保険制度が適用され、地域社会に開かれた医療機関として恒久的に存続させるのがその狙いです。 93 万人強の皆様の貴重な署名を盾に、基本法制定運動を展開してきましたが、6月11 日、衆議院本会議において、この基本法が「平成20 年法律第82 号」として可決されました。IDEA ジャパンを通して署名運動にご協力いただいた多数の皆様に厚く御礼申し上げます。今後はそれぞれの療養所の地域性や特質を活かした独自の生き残り策を、地方自治体や地域住民と話し合いながら摸索していくことになります。
<ハンセン病と中国>
IDEA インターナショナルは、北京オリンピックをハンセン病への偏見・差別意識を改革する絶好の機会ととらえ、IDEA 中国(HANDA)を中心に、時間をかけて、中国政府に対して、正しい知識の普及と啓発活動を始めることにしました。 ところが、開会式間近になって、「ハンセン病問題の最終解決を進める国会議員懇談会」会長の藤井祐久議員の政府レベルでの申し入れに対して、「ハンセン病患者だけは、この声明から外す」という回答がありました。もちろん全く納得できない回答でした。 1998 年、北京で第14 回国際ハンセン病学会が開催された際、北京空港でエチオピアの快復者代表だけが、人目につく後遺症のために入国拒否されるという出来事がありました。付き添ってきたドクターたちが入国審査官に抗議し、説明して、なんとか治まって、エチオピア代表は入国できましたが、10 年前とほとんど変わっていない中国のハンセン病に対する偏見、差別感に失望するばかりでした。 さて、今年の8月21 日から25 日まで広東省広州市で行われたJIA( 家)−日本・韓国・中国学生ハンセン病ボランティアネットワーク5周年大会に参加しました。詳しい報告は次号のニュースレターでしたいと思いますが、現地の学生たちに今回の中国政府のハンセン病患者等の入国拒否問題について聞いてみたところ、彼らもこの報道に驚き、憤慨していました。抗議などのアクションを起こしたのかという質問に対しては、「そんなことをしたら、JIA の活動そのものが止められてしまうから、できない」とのことでした。 広州市では街頭でオリンピックを見ている人だかりはほとんどなく、たまたま24 日の閉会式の模様を放映していたテレビを、ホテルのロビーで見ていたのはわれわれ日本人3人とホテルの従業員2、3人だけでした。出入りする人々は、華美ともいえる北京オリンピックは、一部の金持ちのお祭り騒ぎぐらいにしか見ていないようでした。 <ハンセン病とインド> 北京オリンピックが終わって間もなく、びっくりするニュースが伝わってきました。インド最高裁が「ハンセン病患者が自治体選挙に立候補したり、自治体に就職することを禁じた、インド東部のオリッサ州自治体法は合法」とする下級審の判決を支持する決定をしたというのです。この裁判は、2003 年に州議会選に当選したのに、ハンセン病を理由に当選無効とされた快復者が起こしたものです。 今年6月に国連人権委員会で「ハンセン病差別撤廃決議」がインドを含めて全会一致で採択されたばかりです。私たちはハンセン病の偏見・差別を解消するため、さらに地道に啓発活動を続けなければならないと、決意を新たにしました。 |
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